「腹へったぁ。なんかあったかな」
冷蔵庫を覗いても、期限切れの牛乳とビールくらいだ。
「こんなもん入れとくには、この冷蔵庫大きすぎるよな」
冷蔵庫の上をあさると、カップラーメンがひとつ転がり落ちた。
「あったぜ」
寒空にコンビニに行く気力もないし。
「うう、すきっ腹にはカップ麺がうまい~」
スープを飲み干して、はあっと息をついた良太は、あらためて年末からすっかり変貌した我が家を見渡す。
「カップ麺すする男の部屋じゃないよな~」
情けないが、工藤の用意してくれた家具も部屋自体も今の自分につりあうとは思えない。
だからいつまでも違和感がつきまとうのかも。
「あああ、うじうじとやだねっと。なあ、ナータン」
ナータンはお義理のように、炬燵の良太の膝の上でナーンと答える。
「風呂入ろ、風呂」
バスタブに湯を張って、いつものようにリラックスしてストレス解消、と湯の中に飛び込んだのだが、リラックスしすぎて寝不足もたたったのか、知らず知らず寝てしまい、ガクンと船を漕いだ途端、顔を湯の中に突っ込んだところで目を覚ました。
「ぷは……!」
良太は猫か犬のように首を振って、水滴を飛ばす。
「やばいぜ、こんなとこで溺れてたまるかよぉ」
湯船から出た良太はバスタオルを腰に巻き、そのままベッドに直行した。
からだはホカホカしているが、とにかく眠い。
ちゃんとベッドに入らなくちゃ、と思ううちにどうやらそのまま寝込んでしまった。
「…………良太」
どこかで良太を呼んでいる。
「………おい、良太」
さっきのドアの音がしたみたいな気がするが。
ぼんやりとした頭から次第にもやが晴れるように、脳が覚醒する。
「おい、風邪を引くぞ」
はっと気づくと座り心地のいい椅子に工藤が腰をおろしている。
「……あんた、何してんだよ、そこで」
もそもそと半身を起こし、良太は工藤を少し上目がちに見る。
「灯りがついていたんでいるのかと思ってノックしても、お前は出ないし、どうせこんなことだろうと入ってみたのさ」
コートを机に放って、工藤はタバコをくわえる。
「禁煙ですから、ここ」
「固いことを言うなよ、一本くらい吸わせろ」
どうやら酒が入っているらしい。
今日はKBCのお偉方の接待と言っていた。
工藤にも苦手はあるようで、そもそも接待やパーティ、宴会は嫌いらしいが、特に嫌な相手と飲んできたときは大抵こんな感じだ。
ネクタイを緩める工藤を見て、疲れた顔をしている、と良太はふと思う。
「工藤さん、ちょっと休みとった方がいいですよ。疲れが取れないし、ストレスがたまりますよ」
工藤は苦笑いする。
「俺のストレス解消には、お前でも食らうかな」
「え、工藤さん! う……酒臭い!」
良太を抱いたまま工藤はベッドに倒れこむ。
「やだって、やめろよ、俺疲れてるし……」
「ウソつけ。ほんとはやりたいくせに」
ベッドに良太を押しつけて動きを封じ、バスタオルを剥ぎ取る。
「やだって…工藤! エロオヤジ!」
そんな悪口雑言などものともせず、工藤は強引に良太を抱いた。
喚きつかれて、最後には意識を飛ばしてしまった良太は、翌朝、身支度を整えて出て行こうとする工藤に気づいてからだを起こした。
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