「それじゃ彼女、ここの看護師さんだったんですか?」
「ええ。二年程前、急に辞めて……。東京に行ったって聞いてたけど」
良太が聞くと、若い看護師は何となく言葉を濁す。
何か事情があるのだろう。
「そうですか。俺は送ってきただけなんですけど、坂本さんのことも気になるし、すみません、何かあったら連絡くださいって、伝えてもらえますか?」
良太は看護師に名刺を渡し、病院をあとにする。
「しまった! 『ホテルいなわしろ』ってどこにあるか聞いとくんだった」
気づいたのはもう走り出してからだ。
「俺ってバカ」
良太はちぇっと舌打する。
仕方なく車を路肩に停め、カーナビに電話番号を入力する。
ナビはホテルの位置を教えてくれるが、以前良太はカーナビを過信してえらい目にあったことがある。
良太はやはり目的地に到着しましたというナビの声を聞きながら辺りを見回すが、そんなホテルは見当たらない。
「うううう、さっむぅ!」
降りしきる雪の中、一旦外に出て辺りを見回すが交番も見つからないので、良太は歩道を歩いてきた年配の女性に声をかけた。
「ああ、あの高級ホテルだね、そこの道をちょっと上がっていくとスキー場の看板が見えるから、その看板のとこを左に折れるとすぐだよ」
ジャケットに長靴、頭からすっぽりとショールを被った小さいおばさんは、ゆっくりと念を押すように教えてくれた。
「暗いし、雪、ひどいから気をつけて」
「ありがとうございました」
優しいおばさんに頭を下げて、良太は車に乗り込み、ハンドルを握った。
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