雪のデカダンス2

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 翌二日からは帝都ホテル本館二階では大和屋主催の展示会を中心とするイベントが始まった。
 二日は招待客が対象で茶の湯も行われる。
 この仕事は代理店プラグインが取り仕切っているが、青山プロダクション所属タレントがCMや着物ショーに出演している手前、出張中の社長代理としても顔を出す必要があった。
 それ以上に、大和屋は青山プロダクションにとっては大事なスポンサーである東洋グループの次期総帥とされている綾小路紫紀の妻小夜子の父が社長を務め、小夜子自身も広報担当として名を連ねている。
 この展示会やイベントは小夜子から話が入り、良太経由でプラグインが請け負ったプロジェクトなのだ。
 朱雀の間で開催されている展示会に顔を出して小夜子や大和屋社長の原に挨拶をした良太は、次には庭の方へと続く廊下の突き当りに設えられた茶室へと向かった。
 このイベントのお陰で良太に負けない忙しさで飛び回ったのは、クリエイターの佐々木周平だろう。
 たまたま一番町の佐々木の家の隣が綾小路で、綾小路当主の奥方や小夜子が陽成院流茶道師範である佐々木の母淑子の門下であったために、本来なら裏方であるはずの佐々木若先生が点前を披露する羽目になり、佐々木淑陽一門はそのバックアップとして協力をすることになった。
 あまつさえ佐々木本人は著名人の一人として着物ショーにまで出演する羽目になった。
 工藤と良太二人ともが茶席に招待されたものの、一夜にして良太の部屋の内装を総取替えさせるなどという、どこぞのドッキリ番組のようなマネをしたオヤジ、工藤は、まだギリシアあたりだろう。
 青山プロダクション社長の工藤高広といえば、MBC時代から辣腕プロデューサーとして知られるが、一方冷酷非道とも噂された男だ。
 年末から自身のプロデュースする『大いなる旅人』第四弾のロケハンのために監督やスタッフとともに渡欧し、今回テーマとなるギリシア・ローマ遺跡をうろついているはずだ。
 良太が社長秘書兼運転手兼駆け出しのプロデューサーとして籍を置くこの会社は乃木坂にあり、テレビ等の番組、映画の企画制作プロデュース及びタレントの育成とプロモーションが主な業務内容になる。
 ちなみに、クリスマスにサンタが舞い降りて勝手に模様替えをしたらしい、良太が社員寮と称している部屋は自社ビルの七階にある。
 あ、でも、文句は言ったけどまだ、礼、言ってなかったっけ……。
「どうぞお取り回し下さい」
 不埒なオヤジに思いを馳せかけていた良太は、はっと前に置かれた菓子の器に意識を戻し、ついでに聞き覚えのある声に顔を上げ、菓子を持ってきたのは訪問着に身を包んではいるがにっこり微笑むその顔に、直ちゃん! と口にしそうになってかろうじて留める。
 佐々木オフィス唯一の社員で佐々木のアシスタント池山直子は時々ライブに行くときはゴスロリの延長系ファッションで決めている今時の女の子だが、どうやら淑子の門下生でもあるらしい。
 そんな今時の子がすっかり雰囲気が変わるのだから着物という魔法は面白い。
 何よりこのイベントで訪れた人々を魅了したのは、点前をする時の佐々木その人だ。
 もともと母親譲りの美貌に加え、所作の秀麗さに人々は息をのみ、まさしく松風なる釜の湯の音だけが耳に届く。

 


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