良太と千雪がスキーを外してロッジに入ると、窓際のあたりに黒いウェアにサングラスの男とピンクと黒のウェアの難しい顔をした、どちらも長身の男が二人、只者ではない雰囲気を撒き散らして、二人周囲の注目を浴びている。
「いたいた」
千雪が良太を引き連れて二人のところに歩いていくと、「遅い!」と千雪の顔を見るなり京助が言った。
「どうも」
良太は一応京助に声をかける。
「ターンする時、力のいれどころが違うから転ぶんだ」
「へ………、見てたんですか」
ますます、良太は惨めな気分になる。
「こいつ、やたら人に教えたがりやから」
千雪が笑いながら言う。
「はあ?」
「そや、二月のどっかでまたスキー合宿やろう言うてんけど、良太もくる?」
ぽかんとした顔の良太に、千雪が聞いた。
「スキー合宿、ですか?」
千雪の後ろで京助はやはり苦々しい顔で良太を見ている。
「多分、軽井沢。アスカさんも時々混じってるし。工藤さんもご一緒にどうです?」
新聞を読んでいた工藤は、千雪を振り返る。
「俺はそんなヒマはない」
「ほな、良太だけでも」
「たまにはうるさいオッサンから離れて羽根伸ばした方がいいんじゃねぇか?」
京助が苦笑いする。
「どうせ、気の置けない仲間ばっかやし、俺の高校の同級生とか」
「ああ、研二さんとかですか?」
良太が聞くと、千雪が「そや」と嬉しそうに言う。
「研二さんて、寡黙で恐持てだけどしゃべると優しいし、なんかこう、カッコいい方ですよね」
「やさか』での研二とのひとことふたことを思い出しながら、良太は言った。
「そや」
あれ、と良太は千雪を見る。
「研二はカッコエエで」
今、何か一瞬、千雪さんらしくない顔、しなかったか?
「ほな、決まり、な。工藤さん、ちゃんと良太のスケジュール、あけたってくださいよ」
「ああ」
工藤はおざなりな返事をして、「そろそろ帰るか」と新聞をたたむ。
工藤と良太は千雪らと別れ、車にスキーを積んでホテルへと向かった。
使ったスキーはフロントで預かってくれるし、メンテもしてくれるという。
さすがに雪国だ。
ひと風呂浴びてホカホカで出てきた良太は、豪勢な食事がテーブルの上に所狭しと並んでいるのを見て思わず拳を握りしめる。
ちびちびと日本酒をやりながら料理をつつく工藤の向かいで良太は健啖振りを発揮した。
そんな時、良太の携帯が鳴った。
記憶にない番号だ。
「はい。広瀬ですが……え、アキ子さん?」
思いがけず、頭の隅にひっかかっていた相手からの電話だった。
坂本は腎臓結石で、しばらくは投薬治療でようすをみるらしい。
「あの人、こっちの人でなんか今はIT企業の社長さんなんだけど、喧嘩して親元を離れたからなかなか帰りづらかったんだって。夕べ、ご両親がいらして涙の再会よ。朝から仕事の電話でロビーに居座ってるから、看護師連中に叱られてるわ」
「だったら、とりあえず、よかったですね。あ、でも、アキ子さんは………」
「きっと私のことも気にして、名刺渡したんでしょ? 大丈夫よ。振られて東京でフラフラしてたけど、やっぱりまたこの街で看護師に戻ることにしたわ」
「そうですか、それがいいですよ!」
「ほんとに、広瀬さんてお人よしねぇ、悪い女に引っ掛けられないようにね」
陽気なアキ子の声に、良太は苦笑いする。
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