撮影にちょくちょく顔を出し、森村は持ち前の明るさで撮影クルーからも可愛がられている。
大道具を担当する大森美術は工藤とは古い付き合いだが、そこの一人娘和穂は、父親が社長を務める会社を手伝いながら、本人は造形芸術家でもあり、良太がプロデューサーとして名を連ねる『和をつなぐ』にも出演している。
「良太さんにも届いてますよ、大森さんから」
「ありがとう」
そういう心遣いは有難いとは思う。
だが、この山を見ると、その有難さもどこへやらだ。
工藤宛のプレゼントは一山を作っていたが、中を開けて確かめるようにと良太は森村に言っておいたものの、まだそこまで手が回っていないというのが実情のようだ。
仕方なく、良太は工藤宛のプレゼントを開き始めた。
例によって、山之辺芽久や黒川真帆といった女優陣をはじめ、ニューヨークの佳乃、イタリアの加絵やルクレツィア、だけでなく、良太も知らない名前で、北海道やら沖縄やら大阪やらから届いている。
秋山曰く、その土地のプロだろ、ということだが。
知らない名前からのプレゼントとなると、ついつい包装紙を破くのもぞんざいになってしまう。
あらゆる高価なチョコレート、酒、チョコレートケーキ、などと一緒に、ブランド物のネクタイ、カフス、タイバーなどなど、工藤宛の物は高価そうなものが多い。
「え、レミマルタンルイ十三世って、いくらするんだよ」
と呟きつつも良太はあまり考えたくもない。
母親からは例年通り、ブランデーケーキとチョコレートケーキが良太と会社、それに工藤宛に届いている。
実は母親のケーキに便乗して、工藤にさり気にプレゼントを贈ろうと思っていた良太だが、こんな高級酒には負けそうだ。
森村が付き合っているソフィに、彼女が好きな真っ赤なバラの花束とシャンパンをあげることにした、とこそっと良太に言ってきたので、良太も負けじと工藤には、アプルトンエステート21年というジャマイカのラム酒を買ってみたのだ。
ま、いっか。
いずれにせよ、今夜はおひとりさまのバレンタインデーだし。
良太にも佳乃からはタイバーシリーズで新しいデザインの物、青山プロダクションにとっては大切なスポンサーでもある東洋商事社長綾小路紫紀夫人小夜子から、今年もチョコレートと一緒に愛猫のために新しいペットベッドが届いている。
それに日本を代表するスラッガー関西タイガースの沢村からも今年もふざけたラブマーク付きで冷酒が届いている。
六時頃までには、何とか仕分けも終わり、良太の母親から届いたチョコレートケーキを三人で食べてお開きになった。
「そろそろ俺、失礼します」
立ち上がった森村は、ジャケットなどを着て、ちょっとおしゃれしている。
「これからソフィとディナーなんです」
「お疲れ様! 楽しんでらっしゃい」
「Happy Valentine’s Day」
リュックを背負い、花束とプレゼントの入った手提げ袋を手に、鈴木さんと良太に見送られて森村はうきうきと帰っていく。
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