好きだから48

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「らしいね。その子が西村のパソコンに入っていた画像を携帯に送ってくれたんだが、明らかに慈善パーティの時の写真だった」
「え、そのスパイ大作戦させた子にそんな危ないことまでやらせたんですか?」
 思わず良太は身を乗り出した。
「スパイ大作戦だなんて人聞きの悪い。知り合いの芸能プロダクションにいる演技力抜群の子がバイト探してたんで、いや、その子、舞台が多いから、バイト掛け持ちしててね、実入りのいいバイトやらないかって。編集部には、今度編集者の役をやるんで役作りにバイトさせてって頼んで、ちゃんとお礼もしてるし」
「編集者はパソコンから画像盗むとかしませんけど」
「まあまあ、さすが、キモが座ってる子でさ、しかもあの編集部、パソコン管理ルーズらしくて。で、その西村がサボりでよく使うって喫茶店が近くにあってね、そこの店員さんに、こういう人西村さんと一緒に来ませんでしたかって聞いてみたら、ビンゴ! その店員さんの言うには、コーヒー持ってった時に急に西村が足投げだしたのにけっつまづいて、頭からすっ転んでカップ割れてコーヒーこぼれてめちゃくちゃだったから忘れろと言われても忘れられないって」
「………ケンシムラのコントじゃないんですから」
 胡乱げに良太に見つめられて、藤堂はハハハと笑う。
「ま、とにかく、西村が会ってたのが真岡弁護士事務所のお抱え興信所の大坪らしいことは、写真見せて確認したからね。ちゃんとお礼をすると丁寧に対応してくれるもんなんだよ、うん」
 藤堂はドヤ顔でのたまった。
「はあ、ありがとうございます、お忙しいのに」
「いやいや、良太ちゃんのためなら一肌でも二肌でも」
 きっと同居人はまだ作品展へラストスパートで藤堂は蚊帳の外なんだろう、と良太は勝手に推測する。
「浩輔さんも忙しいんですね、今」
「そうなんだよ、よくわかるね。ずっとやってきたベリスキーが今度リニューアルすることになって、ネット媒体も浩輔ちゃんがやることになったもんだから、大和屋さんの方もあるし、今、師弟ともどもてんてこ舞いで」
 何年もつきあっていれば、藤堂の行動パターンもわからないでか、というところだが。
「こちらも真岡弁護士直々に、工藤宛に電話がありまして」
「ほう?」
「出張中の工藤に代わって俺が聞いたんですが」
 良太は念のために録音したデータをパソコンで再生した。
『芸能誌に妙な記事まで載せられて、しかも御社が仕掛けたでっち上げということであれば沢村氏はもとより朝日産業としても新聞社や御社に対して名誉棄損での訴訟もやぶさかではない』
『沢村氏というと、どの沢村氏でしょうか?』
『何を寝言を言っているのかね? 沢村智弘氏に決まっている!』
 そこで良太は再生を止めた。
「この人も寝言言ってますよね?」
「おそらく沢村宗太郎氏はご子息に対して大いなる認識不足があるんだろうね」
「にしても、藤堂さんのスパイ大作戦で簡単に裏も暴けちゃうようなやり方で、本当に大企業の弁護士が務まるんでしょうか」
「素人がやるんだからお粗末なもんだよ。プロにやらせないからこういうことになる」
「そういう問題ですか?」
 藤堂は肩をすくめて見せた。
 

 


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