好きだから65

back  next  top  Novels


 どこかで別れを言わなければならない。
 それはずっと考えていた。
 できればちゃんと会って言いたい。
 のはやまやまだが、会ったら、ちゃんと別れを言えるのかといえば自分に自信がない。
 それに、下手に会ったら、沢村の周囲を嗅ぎまわっているという輩に知れてしまうかもしれないことを考えると、やはり会うこともできないかも知れない。
 電話で言うしかないか。
 頭の中でごちゃごちゃといろんなことが飛び交って収拾がつかない。
「周平、聞いてる?」
 目の前で手を振られて佐々木は目を上げた。
「あ、ああ」
「この辺りに子供ブランドっつうか、そういうのなかったか?」
「キッズブランド?」
「だから、来月初め、健斗誕生日なんだよ、六歳の。去年、Tシャツとかキャップとか、燕グッズやったら、燕ばっか、だせーとかいいやがって」
「五歳児にだせーって言われたん?」
 佐々木は笑う。
「笑いごとじゃねんだよ。じゃあ、新しいゲームアプリと思ったら、そっちはかあさんがくれるからとか言いやがって」
「五歳児にかあさんて呼ばせとんの?」
「いや、俺が、かあさんて呼んでたもんだから、かあさん、とうさんて」
 稔は手持無沙汰に頭をかく。
「元、奥さん、何も言わへんの?」
「あいつはそういうとこ、あんましお嬢らしくないっつうか、ジェンダー差別とか特に嫌ってるし……ってか、環希のことはいいんだよ、とにかく、お前ならアート感覚で、そーゆうの、わかるんじゃね?」
「俺? 俺なんかにファッションセンス求めてもろても。大体が、ほとんどうちの直ちゃんが選んでくれるよって」
「ああ、あのヘヴィメタの子?」
「ファッションセンスは並みじゃないし、ああみえて稽古事一通りやってるし、一般常識は祖母に躾けられたとかできっちりやから、対外的な季節のやり取りとか任せきりや」
「それ、お前、まさしく好一対ってやつじゃね? マジ、あの子と何でもないわけ?」
「まあ………、俺の一番の理解者ではあるんやけど。独立する前の会社からの付き合いやし、もう兄妹みたいなもんやからなあ」
 今現在、直子はジャストエージェントからの出向という形を取っているが、オフィスササキも三年目を迎えるにあたり、とりあえずそれなりに利益をあげてきて、正式な社員としてはどうかと、ジャストエージェンシー社長である春日とも話しているところだった。
 もちろん、直子のOKがあればだが。
「せや、確かカッコいいキッズファッションがあるて、前に直ちゃんが、従姉の子供服探してた時……」
 佐々木は携帯で検索して、「ああ、神宮前、ここから近いで。行ってみる?」と聞いた。
「おう」
 気を良くした稔はとっとと支払いを済ませ、店を出た。
 表参道ヒルズに入っているキッズブランドの中に、目当てのショップはすぐ見つかった。
「なかなかかっこええやん、ワイルド系で」
 佐々木は店内を見回して言った。
 いくつかのテーマに合わせて大人顔負けのアイテムがずらりとそろっている。
「う……しかしどれがいいんだ?」
「スタッフに聞いた方がええんちゃう? 身長とか言うて。あ、さっきの写真見せてみたら?」
 そんなことを言い合っていると、スタッフの方から近づいてきた。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます