残月13

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「ってか、あの………」
 良太は言い淀む。
 千雪には京助という背後霊のように千雪に付きまとう存在がいて、しかも超ヤキモチ妬きなあの京助のことを、檜山が知っているのかどうか計りかねたので、言葉が続かない。
「どうしてあの、そんなことを………」
「だから、研二を好きになっても無駄だよってこと」
「えっ、いや、あの………」
 ってことはつまり………。
「何回か会う機会があって研二と、俺、何かすごく惹かれたんだ。気がつくと好きになってた」
 うわっ、やっぱそういう展開かよっ?!
「俺、有楽町の研二の店にちょこちょこ行ったりするうちに、千雪が現れたことがあって、研二から紹介された時にすぐわかった。研二が千雪を好きなんだって」
 そういえば、スキー合宿の時、研二はさりげなく千雪の世話を焼いていた気がするが、みんな仲がいい同級生って感じだったし、そんなこと微塵も思ってもみなかった。
 良太はスキー合宿の時の研二を思い起こした。
 じゃあ、あのヤキモチ妬きの京助は研二が千雪を好きだってこと知らずに、仲良しこよししてたってこと?
 やはり芸術家というのは繊細だから、そういう人の心の機微みたいなものまで感知してしまうのだろうか。
 ああ、でも、そうか、好きな相手のことだから、わかってしまうんだ。
「でもでも、だったら千雪さんは、研二さんのそういう思いを知らなかったわけ?」
 心の中で呟いたつもりが、良太はうっかり口に出してしまっていた。
 檜山が良太を振り返った。
「まさか。あの二人、多分、相思相愛だったはずだよ」
「うそ??????」
 え、じゃ、京助は?
「え、それってどういう? 何か、こんがらがってきた」
 千雪さんが二股???
 って人じゃ、絶対ないと思うぞ。
「知ってるんだ? 千雪と京助のこと?」
 檜山にまっすぐにきつい視線を向けられたら、良太も頷かないわけにはいかなかった。
「匠も知ってる…んだ?」
 こういうデリケートな話題は、はたで勝手に繰り広げていいものでもないだろう。
 特に、千雪と京助は著名人でもあるわけで。
「うん。俺、研二に好きだって言ったんだ。でも、研二は、ごめんなって。それで、千雪のことが好きなのかって聞いた」
 良太は固唾をのんで檜山の次の言葉を待った。
「そしたら、千雪には大事な人がいるからなって」
 何それ? 研二さん、それめちゃきつくない?
「俺、千雪さんにも聞いたんだ」
「え……」
 檜山は必死だったのだろう。
「そしたら、好きだったって。でも、今は京助がいるからって」
「え、千雪さんが、そう言ったの?」
「うん」
 聞いていて、良太はふと、この展開、どこかで聞いたような、と思う。
 眉を寄せてしばし思いを巡らせた良太は、はたと気づいた。
 これって、まるであの時の俺じゃん!
 工藤は千雪のことを好きなのだと、そう思いながらも良太は工藤のために何かしないではいられず、工藤を恨んでいた男に刺されて入院していた時、見舞にきてくれた千雪が、工藤との関係は誤解で相手は別にいるし、と言いおいて帰って行った。
 そんなことがあったっけ。

 


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