残月20

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 良太はプラグインやオフィスササキ、それに鈴木さんに持っていく菓子を携えて、千雪とは店の前で別れた。
「じゃあ、明日、よろしくお願いします」
 研二は笑みを浮かべて、わかりました、と答えた。
 店を離れてエスカレータに乗る際、店先で笑い合っている研二と千雪の姿が見えた。
 俺にはわからないな。
 もちろん、俺なんかよりいろいろあったんだろうけど、千雪サンも研二さんも、何か、そういうの、もう乗り越えちゃったって感じなのかな。
 でも匠は、やっぱり研二さんのことが好きなんだ。
 うう、俺がどうこういえるような立場じゃないけどさ。
 プラグインに寄ると、藤堂や西口がいて、良太がやさかの栗きんとんと言うと、主に藤堂に大歓迎を受けた。
 お茶に誘われたが、オフィスササキに寄るし鈴木さんが待っているからというと、「また美味しいもの持っていくよ」と送り出された。
「わあ、佐々木ちゃん、これはお茶を点てていただかなきゃだよ! 良太ちゃんも一緒にどう?」
 オフィスササキでも直子が目を輝かせて喜んだ。
「とてもありがたいお誘いだけど、鈴木さんが待ってるので」
「直ちゃん、今夜お稽古に持ってったらええ。ぎょうさん頂いて、おおきに」
 佐々木も結構お疲れのようだったが、CMの件を少し話して、オフィスを出た。
 乃木坂に戻ると、鈴木さんも喜んでお茶を入れてくれた。
 クリームあんみつも絶妙に美味かったが、やはり栗きんとんは格別だ。
「佐々木さんの点ててくれるお抹茶とならきっとよく合いますね」
「あら、お抹茶苦手だったんじゃなくて?」
「うーん、それが、研二さんのお菓子と佐々木さんのお抹茶なら美味しいってこと、わかります。俺も大人になったでしょ?」
 鈴木さんは笑っているが、スキー合宿の時、佐々木の点てたお茶は実際美味かった。
「二、三個、工藤さんにも取っておいてください」
「栗きんとん、工藤さん召し上がるの?」
 良太は、工藤から聞いた曾祖母の作ってくれた栗きんとんの話をした。
「まあ、そお」
 鈴木さんは微笑んで、「でもよかったわ」と続ける。
「工藤さん、ご両親もいらっしゃらないし、ひいお祖父さまとひいお祖母様が亡くなられてからは平造さんとお二人で暮らしてこられたみたいだから、そういうお話を聞くと、ほっとするわね」
 その日は良太も出かける予定はなく、夕方ちょうど工藤が帰ってきたので、鈴木さんがお茶と栗きんとんをデスクに持って行った。
「やさかの栗きんとんですわ。さっき美味しくいただきましたの」
「ありがとう」
 自分が持っていくより、鈴木さんにそうやって言われれば、工藤も素直に食べるだろうと、良太はチラッと見やる。
 案の定、パソコンを立ち上げて画面を睨み付けながら、工藤が栗きんとんの一つをパクっと口に入れるのが見えた。

 


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