でも研二さんと千雪さん、相思相愛だったとか、匠、言わなかったか?
なんで?
だったら、どうして二人はそのままでいなかったんだろう。
京助なんかより、ずっと研二さんの方がいいような気がするのに。
ついまたそんな余計なお世話なことを考えてしまった良太は、いけね、とラビリンスのような思考を断ち切って、後片付けに走った。
「お疲れ様です」
良太は工藤や日比野監督らに声をかけた。
「じゃ、俺はこれでスタジオに向かいます」
「ああ」
「明日、成田まで送って行きます」
「HIDAKAがあるだろう。自分で行くからお前は自分の仕事をしろ」
せっかくの申し出もすげなく却下されて、良太は、心の中では、ちぇ、と思う。
十一時発の直行便だが、ギリで取ったチケットはエコノミーしかなかった。
時間は多少早く着くが、エコノミーは工藤には結構きつそうだ。
京都の撮影が終わったら、俳優陣はニューヨークに向かう予定になっている。
工藤はニューヨークでの撮影が終わるまでは帰ってこないということになる。
ま、しょうがないけどさ。
秋晴れの京都は観光客で賑わっていた。
いや、よくもこれだけこの街に集まったよな、と良太が呆気にとられるくらい、ごった返していた。
もちろんアイドルや超人気俳優がいるわけではないから、本谷の時のようなファンで溢れかえるようなことはないだろうと思われたが、それでも南澤奈々も最近、男性ファンのみならず同世代の女子人気も結構あったりする。
相変わらず奈々の父親は何かあったら容赦しないという姿勢を貫いているし、大学に入ったら一人暮らし、も未だに実現できていない。
どちらかというと天然なところがある奈々を、良太もまた谷川も危なっかしく思うところがあるのだ。
とにかく奈々もだが、ひょっとしてこの人、ゆくゆくは人間国宝とかなるんじゃないか、などと良太が気を回しているのが、檜山匠だ。
最初はしっかりしているプロの能楽師だと良太は思ったのだが、確かに演技などでは撮影ではもったいないと思われるような舞を披露してくれたりする実力者だが、よくよく観察していると天然なところがあったりするのだ。
撮影以外では何か考えているのだろうと思った良太だが、「え? 俺? 何も考えてない、ぼーっとしてる」という檜山の返事。
休憩時間、檜山を探していると、いつの間にかロケ隊から離れて通りに出ていて、海外からの観光客に道を聞かれて、バカ丁寧に教えたりしている。
「ちょ、匠、何してんの」
背の高い男女に何か説明している匠に慌てて良太が駆け寄ると、「英語で教えてやったのに、通じないんだ」などという。
すると今度は女性が良太に話しかけた言葉はフランス語のようだった。
良太が、昔取った杵柄ではないが、数年前パリに行った際、短時間で覚えさせられたフランス語を思い出しながら説明すると、ようやくわかってくれたようで、メルシイボクゥと笑って去った。
「お、すげ、良太、フランス語できるんだ?」
「できるなんて程じゃないですよ、何してんですか、離れちゃだめですよ」
良太は匠の腕を掴んでロケ隊まで連れ戻した。
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