これだから6

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 直子の言葉に、沢村は母親を振り返る。
「まあ、よく覚えてらしたわね、そうそう、あの時、もしかしたら美術館で佐々木さんにお会いできたらいいなって思って、そしたら、ホントにお目にかかれたの。すぐに大学の後輩の皆さんに囲まれてらしたけど」
 彰子は屈託がない無邪気な雰囲気で、良太がいつか沢村から聞いた冷たい母親像とはかけ離れていた。
 不愛想な沢村が息子とは到底思えない、メチャ陽キャ?
「とにかく」
 沢村がむっつりと母親のまだ続きそうな言葉を遮った。
「佐々木さんのお母さんにはお付き合いを申し出てるし、ここは茶会だから、かあさん、ぶち壊すような真似はするなよな」
「するわけないじゃないの」
「そもそもお茶席とか、大丈夫なのか? あんたら」
 沢村は彰子と梶田にえらそうに確認する。
「やだわ、この子は。私もお茶のお免状はいただいているのよ、大学まではちゃんと嗜んでました」
「ウソだろ?」
「ウソだろはお前だ。自分のお母さんのこと、ホント知らな過ぎ」
 良太が口を挟む。
「ある意味、佐々木ちゃんと似てるかも。興味ないこと以外覚えない」
 直子が頷いた。
「おじいさまのお茶室にあなたも行ったことあったでしょ」
「ああ。そういえば、佐々木さんのお母さんに月照庵の話をしたら、大河内さんですかって知っていたな。由来も知らないのかって怒られた」
 彰子に言われて、始めて淑子と話をした時のことを、沢村は思い出した。
「まあ、この子ったら、信じられないわ」
「ちょうどお昼ですから、お客様が切れたようですし、沢村さん、直ちゃん、良太ちゃんもご一緒したらいかがです?」
 タイミングを計ったように傍で様子をうかがっていた藤堂が近づいてきてまるでコンシェルジュのようにそう提案した。
「あら、そうね、智弘、佐々木さんに紹介していただきたいわ」
 眉を顰めながら、沢村は仕方なく母親たちの後から茶室に入っていく。
「え、俺はちょっと………」
 できれば遠慮したかった良太だが、だめよ、折角の面白いご対面じゃない、と直子に囁かれ、仕方なく後に続いた。
 佐々木は沢村、良太、直子が一緒に席入りをしているのを見て、客が途切れたなと、少しほっとした。
 彰子は確かに経験を積んだ流れるような所作で正客をつとめ、道具の拝見を申し出た。
 佐々木は道具の説明をし、一礼して顔を上げた際、正客として座る女性と目が合ってデジャブを感じた。
 何処かで会うたかな。
 その時、一人置いて隣に座っている沢村がボソリと言った。
「佐々木さん、母です」

 


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